彼とのこと(お見合い後9回目)②
さて、私は結婚するんでしょうか。
待ち合わせ場所に行くと、彼がすでに待っていました。
緊張したように見えるのは気のせいでしょうか。
世間話をしながらお店に着きます。
お店を見た瞬間わかります。
これは友達同士で来る店ではないと。
窓際の席に案内されます。
全面が窓で高層階からはビル群が一望でき、沈みかけた夕陽がすごくきれいだったことを覚えています。
めずらしく彼がアルコールを注文して、周りを見渡すと周りはカップルばかりです。
正直、食事の内容も話した内容も全く覚えてません。
隣のカップルがプロポーズをしているのが目の端で見えました。
テーブルの上に置いてあったプリザーブドフラワーに指輪が仕込んであったようです。
私は慌てて目の前のプリザーブドフラワーに目をやり、指輪がないことに安心します。
もしかして考え過ぎ?
なにも起きないのかも。
食事も終わり、最後のデザートが出てきました。
デザートのプレートの「僕と結婚してください」という文字を見た瞬間、顔が熱くなり血が頭に上るのを感じました。
たぶん息をのんだと思います。
彼がゆっくりと「言うのに時間がかかったけど、僕と結婚してください」とはっきり言いました。
どうしようどうしよう。
「指輪もあった方がよかった?」
彼のその言葉で我に返りました。
(彼曰く、この世の終わりのような顔をしていたと)
(指輪がないくらいでこの世の終わりのような顔をするだなんて、私の事をなんだと思っているんでしょうか)
「本気?」
今振り返っても我ながらこの一言はないだろ、と思います。
お見合いから1年以上、この期に及んで本気?はない。
本気じゃなければこの店はない。
「だって結婚観も聞いたことないし!」
とにかくこの場を逃れたい一心で、いまさらながらの結婚観のすりあわせです。
私は石橋を叩き割っても渡れない性格で、プロポーズ→結婚する!という決断がこの一瞬ではできないのです。
でもここで逃げたらここでこの関係は終わり、ということは十分理解できます。
なんとか時間を稼がなくては。。。
「子供はほしい」
は?
いまさら何言っちゃってるの?
私、とっくに高齢出産の年齢ですけど?
私だって子供はほしい。できれば何人もほしい。子供好きだし。
でも私はアラフォーで、もう無理かもしれないって思いながらずっとお見合いしてきたんですけど?
いまさら子供がほしいだと?だったらもっと早く言ってよね!
「できないかもしれないよ」
「できるでしょ」
「どうしてもほしいなら、もっと若い子と結婚しなよ」
「まだ30代なんだからできるよ」
思ってもみなかった押し問答になりました。
お見合いをしてから初めてのケンカが、まさかのプロポーズの日です。
私は35歳の誕生日を過ぎた時、人生で子供を持つことは無理かもしれないと思いました。
お見合いにも身が入らなくなりました。
35歳でみんながみんな妊娠できなくなるわけではないとわかっています。
でも若い時からなんとなく子供ができにくい体質だと思っていて、35歳を過ぎた時子供を持つための結婚は諦めようと思ったのです。
「子供が絶対にほしいなら、私は結婚したくない」
子供ができないことで、負い目を感じたくない。
それが私の本心でした。
できなければ二人で生きていこう、そう言ってくれる人とでないと結婚はできない。
私はこの人にほしいものをあげられないかもしれない。
そんな風にずっと思いながら生きていくことは私にはできない、そう思いました。
「子供はほしいけど、いなかったらいない人生でもいい。子供ができなくても結婚したい」
本心かはわかりません。
でも、これで私に結婚を断る理由はなくなりました。